★耐性と冷房その他

数年前の習作。
女の子性強い。



朝は起きられる。三十分前
十五、五、タイマー。
 

「おはよう」
「おはよう」
丁度音が、頭の、特に脳みその上で、ゆったりしている。沈着するには、まだ足りない声、っていうかあたし、こんなに欲深かよ、とか思う。
足りないってなんだ。
とりあえず、足りない。枯渇。かといって、あなたがほしいですとかその手の類いは言えない。だって、そんなキャラじゃない、手のひらの感触はどうだっけ、あたしは、どう呼べばいいんですか、
「とうこ」
「なに?」
うれしいのに、うれしくない。肩こりと口内炎と、あといろんないたみの所為



多分、恋愛における甘い瞬間よりも、こうして仕事に沈んでいって、あたしになんか見向きもしてくれないときや、あたしの知らない未知の人(それは彼の友達とか)と楽しそうにしていて、あたしになんか見向きもしてくれないときの方が、あたしはしあわせの深みに溺れていられる。
そっぽを向かれたら、あたしは彼のことしか考えなくなるから。
わたしは愚かだ。
魚じゃないのに、溺れようと毎日努力する。あ、努力家だ。



たっぷりと譫言をはきだし、今日は彼の胸元に収まる。




耳は誰かを待っている。
ノックしてくる。
がしゃがしゃする心拍
なにしてんのなんて愚問だ
「じゃあおまえはその手でなにをしたんだ」
愛故の攻撃をくらわせろ
パレスチナの情景、まるで不謹慎な頭であります。
「お前なんて、言うもんじゃないよ。」
「なにをしたんだって訊いてんだ、ばかやろうこのやろう」
「愛でただけだよ。」
あぁ、そう。
そうか。



ちょっとした雨が降る。
さー っていう音と、その他の泣いているようなきもちのよい音と、唸り声。
天井からあたしは見下ろす。
そこに何を見ているのかわからないあたしを
「しあわせー」
そうか、しあわせか
髪の毛から、すきなにおいがする。おもいっきり鼻を埋める。また雨がふる。もう土砂降りだ。
どうしてこんなときにしか、すり寄ることができないんだ。だめすぎる、よすぎる、はやくあたしの中に、彼の声を沈着させなくてはならない。パニックだ、なぁ?




朝ご飯/爪のかたち/新しい生活のこと/プレゼント/帰り道/買い物/音楽のこと/買いにいく下着のデザイン/今冬新作のチョコレート/彼のフォルムとにおいのこと




朝は起きられる。三十分前
十五、五、タイマー。
 

「おはよう」
「おはよう」
声が、のんびり体に染み込んでいく。
本日は、快晴である。