単細胞思惑か東京12ヶ月




弟みたいな、なんかようわからん友達、が、いる。いや、弟やないか。
あたしたちは、いつ知り合ったのか忘れた。
とまにどちらともなく会って、少し喋ってただ抱き合う。
今日は、昼だ。
「なあ、ひろい。ちょっと布団干したら?」
ひろい、というのが彼の名前で、その由来は、本来の親に捨てられて、次の親にひらわれたから「ひろい」というそうだ。
ちなみにその名付けた親も、また捨てていったらしい。
ひろいの顔、あたしから見て左目の上と眉毛の間に切り傷がある。
それから、下唇の下らへん、右よりのへんにも切り傷がある。
その傷は、猫にやられた、という設定になっている。
「うーん」
「おきろー!!」
ひろいを布団から転がし出して、あたしはベランダに布団を出した。
電車が通っていく。ここのアパートは、電車が至近距離で通っていく。
今は、線路の脇が緑で、少し菜の花がきれい。
というか、今日はいい日やな。ごはんつくってあげよかなあ。
と、思ったけど、きっとひろいは食べてくれないからやめる。


う   しろから  ひろいが 抱きついてくる


力強い腕(腕もいくつか傷がある)に、手をふれると、ものすごい力で、体を締め付けられる。
「あ あ ああ あ あああ 、くるしいー」
「ははは」
ひろいは脱力して、あたしの背中に顔を擦る。
あたしはひろいのほうを向く。顔と頭をなぜる。部屋に入る。
「ごはん食べにいこかあ」
「うん」
意味もなく、ひろいの体をさわりたく
抱きしめて、粉砕するくらいにしてやりたいときがある けど
あたしはそれは、しないでおくべきなのだ、と
しかもその考えは「過信」であることも、よく理解している。
でも、ひろいはあまりにも、わたしのどこかを満たす要素になって

今も、スニーカーを履くまるまった背中が、最高いい。