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単細胞思惑か東京12ヶ月





起きたら、知らないおっさんが隣で寝ていた。
だれなの?起こした方がいいの?
「はっ」
おっさんは、かくんってなって、目を覚ました。ぼんやり前を見ている。
「あー、寝てたー…あ」
目が合った。
「こんにちは。ごめんね、あの、つい隣で寝ちゃって…」
「いえ、大丈夫です」
「君は、この辺の人?」
「や、東京です」
「え、東京なんだ、そっか、一緒じゃん」
「そうなんですね、奇遇にも」
おっさんは、喋るのを見ているうちに、すごい穏やかな、超ゆとりのありそうな大人に見えた。
なんか髪もこう、後ろできゅっと束ねてる感じとか、髭がちょっとある感じとか。
「えー東京かー。名前なんて言うの?どの辺いるの?」
「え、あ、中村です」
「中村なに?」
「中村ひろい、です」
「ひろい!?」


ちょっとやっぱ、うぜえおっさんだった。
名前の由来とかいろいろ訊かれてるうちに、もう日は暮れるわ、まして電車の乗り換えもできなくなってしまった。



「俺。今日、この辺で泊まるつもりだから、一緒に来ようよ」
「こ、来ようよって、なんか、え?ちょっとやっぱ変、ですね」
って言ってると、大笑いされた。



「いこういこう!」