単細胞思惑か東京12ヶ月



「ただいま」
玄関を上がって、一度そう言った。
「ただいまー」
もう一度言った。
多分、一ヶ月弱くらい会ってない。いろいろつらかった、と思う。
いや、嘘。つらいっていうのとは違う。
仕事で溺れかけてた。一晩だけは、後々つらかったって事で
「おかえり」
だらだらと伸び続けてたひなたの髪の毛は、ばっさりいかれて、ベリーショートになっていた。
「…何事やろ」
「なにが?」
「毛ぇ」
「えー、普通に、切りたかったから切ったー、だけやで」
「そう?」


ほんまにそう?


「少年みたいになってるけどっ」
「うん。いいねんそれで。あかん?」
ひなたは、オールインワンを着てて、もう全くの少年やった。


俺はそれでも、そんな少年みたいになってても、やっぱりひなたを好きやと思った。


「なあ、ごはん作ったで」
「ひなたあああーーーーっ」
「うわあーーー」
持ってたリュックを投げて、ひなたのところへ走って、両腕を広げて抱きついた。
ひなたの両腕も、ほっそい、それが俺の背中に回る。
上下にスライドする。なでられる俺。
俺もひなたの髪の毛をくしゃくしゃなでた。
犬みたいやった。
「なあなあとおるさん」
「ん?」
「ごはんにする?ごはんにする?それともごはんにする?」
「全部ごはんかい」
「へへ」

おひめさまだっこしたら、素直に両腕を首に回してきた。
直後
回したその腕で、頭を数回しばかれる。